バベル

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「21グラム」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが中々の秀作を撮った。彼の作品の中では一番の好み。特にラストの映像体験は私の好みだし、意図的な良いラストだと思う。
この作品のすごさはモロッコ、メキシコ、東京を均一のトーンで映像化していること。山岳地帯、砂漠、大都会と違った風景にもかかわらず何故か同じように見えてしまう。それはカメラによる均一なトーンを実現できたから。映画のテーマに反する、はたまた沿っているのかもしれないが、同じ民族から別れてしまい違った言語を持った人々が風景の中に同化してしまっている。この不思議な映像体験はあまり見たことがない。風景の中に同化する描き方は日本ではかの黒澤明が晩年試みた事。影武者、乱は風景の中に照明まで持ち込み、そして人々を溶け込ませた。
この作品においても登場人物たちは、風景の中に溶け込んでしまう。東京のシーンでさえそうだ。東京の現実を描いているようでも、あまりモロッコ、メキシコと受ける印象が違わない。クラブの照明効果でさえ、それ程の違った印象を持ち得ない。というより印象を壊していない。カメラマンの色調を抑えた画面作りの効果だろう。カメラはそしてスタティック(静的)だ。あまり移動撮影がないし、ドキュメンタリータッチでさえある。だからひとつの事件を同じように体験している印象を受ける。
そこでラストの違和感。今まで静的なカメラは突如動き出す。親子が一種和解を感じさせる姿からカメラはバックし、バベルの塔=高層マンションを映し出し、東京の街に溶け込む。その色調のほのかに暗くそして冷たい。上に乗せた写真でも分かるように色調が冷たくもブルーだ。それがラストでも夜景の中にほのかに出ている。しかし窓の中の明かりは黄色の色調で少し暖かい。このコントラストは偶然なのかもしれないが目に焼きつけたい程。
菊地凛子の存在感は特筆すべき。アカデミー助演女優賞ノミネートも頷ける。彼女これ以上の作品にも演技にも恵まれないだろう。それ程にこの映画は彼女にぴったりの作品なのだと思う。

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  • 真・映画日記『バベル』

    Excerpt: 4月27日(金)◆424日目◆ 最初に言う。 点数は10点満点、いや、それ以上である! アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの最高傑作!! 映画とは世界を見ることだ。 .. Weblog:            racked: 2007-05-04 11:30